映画『アバウト・シュミット』ジャック・ニコルソン主演によるヒューマン・コメディの傑作

映画情報


アバウト・シュミット
(原題:About Schmidt

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製作年:2002年(アメリカ) ジャンル:ドラマ/コメディ
上映時間:125分


スタッフ


監督:アレクサンダー・ペイン
脚本:アレクサンダー・ペイン、ジム・テイラー
原作:ルイス・べグリー
製作:マイケル・ベスマン、ハリー・ギテス
音楽:ロルフ・ケント
撮影:ジェームズ・グレノン
編集:ケヴィン・デント


出演者


ジャック・ニコルソン、キャシー・ベイツ、ホープ・デイヴィス、ダーモット・マルロニー、ジューン・スキップ、and more


受賞歴


第60回ゴールデン・グローブ:男優賞(ドラマ)ジャック・ニコルソン、脚本賞受賞
その他多数受賞&ノミネート


【アバウト・シュミット】解説/あらすじ


『ジュラシック・パークⅢ』のアレクサンダー・ペイン監督によるヒューマン・コメディ。66歳で定年退職した男の姿を、ユーモラスに描き出す。主演は『恋愛小説家』などの名優ジャック・ニコルソン。共演には『ミザリー』のキャシー・ベイツ、『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』のジューン・スキッブ、『アトランティスの心』のホープ・デイヴィスなど。


アメリカ・ネブラスカ州オハマ。長年勤めた保険会社を66歳になって定年退職したウォーレン・シュミット(ジャック・ニコルソン)。退職した翌日の朝目覚めるも、仕事のない生活に馴染めず、自分の存在価値に疑問を抱く。テレビで観たコマーシャルをきっかけに、アフリカで苦しい生活を送る6歳の少年ンドゥグの養父になって、小切手を送付するとともに、自らの境遇を綴るなどをした手紙を書くようになるのだが、ある日ウォーレンが出先から帰ってみると、妻のヘレン(ジューン・スキッブ)が倒れており、そのまま帰らぬ人となってしまう。葬儀のために一人娘のジーニー(ホープ・デイヴィス)と、婚約者のランドールが帰って来て、悲しみの中を妻を見送りながら、失って初めてわかる有り難味をかみ締めるのだったが…。


【アバウト・シュミット】映画感想/レビュー


名優ジャック・ニコルソン主演の笑いと悲哀に満ちたヒューマン・コメディ。監督/脚本は『サイドウェイ』、『ファミリーツリー』、『ネブラスカ 2人の心をつなぐ旅』などのアレクサンダー・ペイン。


サイレント・コメディからの影響が強い作風


サイレントコメディから影響を受けている監督だからか、笑いの中にペーソスを混ぜ込んでくるチャップリンの映画を彷彿とさせ、セリフがないシーンでも独特の‘間’によって、笑いや悲しみを堪能することができます。
また、笑いの中にもアメリカ社会の家族の在り方、他人への無関心などを皮肉ったブラック・ユーモア的な描写が散見されるのも、アレクサンダー・ペインの特徴。


定年退職した66歳の男を神懸り的に演じるジャック・ニコルソン


舞台となるのは、監督の生まれ故郷と同じネブラスカ州オハマ。
長年勤め上げたオハマの保険会社を66歳で定年退職したウォーレン・シュミット(ジャック・ニコルソン)は、退職翌日から仕事のない生活に馴染めず、手持ち無沙汰を感じると同時に、家の中では妻のヘレンの尻に敷かれ、気になって訪れた会社では、ウォーレンの仕事を引き継いだやり手の若手に軽くあしらわれる。
社会的な必要性を感じてか、それとも純粋な慈善のためか、テレビのコマーシャルをきっかけに、ウォーレンはアフリカで困窮した生活を送る6歳の少年ンドゥグに手紙を書き、慈善団体を通して少しずつお金を送るようになるのだが、そんなある日、ヘレンが急逝。
ヘレンが何をするにしても疎ましく思っていらウォーレンであったが、失って初めてわかる有り難さ。
悲しみに暮れる中、一人娘のジーニーが、ウォーターベッドの販売を行う婚約者のランドールを伴って帰省。
葬儀の準備を進め、ヘレンを弔うのだったが、ジーニーに“なんで一番安い棺にしたの?”などと言われる始末。
ランドールとの婚約も快く思っていなったウォーレンは、そのままジーニーと気まずい空気になったまま、ジーニーが帰っていくのを見送る。
更にウォーレンに追い討ちをかける事実が発覚。親友であるレイと、亡くなったヘレンは、ウォーレンの知らないところで浮気をしていたのだった。
これに激怒したウォーレンは、やり場のない怒りを抱えたまま、ヘレンの希望で買ったトレーラーハウスを運転して、ジーニーの結婚式のためにデンバーに行くことにするのだった。


途中でウォーレンはキャンプ場に立ち寄り、トレーラーハウスに興味を示した男性ジョンと知り合い、ジョンの計らいで、彼の妻ヴィッキー共に夕食を共にすることに。
しかし、ジョンが買い物に行っている間に、ウォーレンの心の内を見透かすように優しく接してくれるヴィッキーに対してウォーレンは、何を思ったかキスをしてしまう。
これに怒ったヴィッキーは、ウォーレンを追い出し、ウォーレンは再びトレーラーハウスを走らせ、ランドールの実家を訪ねるのだったが、ここで迎え入れてくれたランドールの母であるロバータ(キャシー・ベイツ)を始め、その家族は一風変わった人たちで、当然の如くウォーレンがその家族に馴染めることもなく、ジーニーに結婚を考え直すよう諭すのだが、これは聞き入れられず、結局式の日を向かえ、ウォーレンもスピーチをこなし、結婚式を終える。


オーバーアクト気味の演技で有名なジャック・ニコルソン。途中で薬を飲んだりしてぶっ飛んだ演技をするシーンこそあれど、この怪優としては比較的抑え目な演技。
ジャック・ニコルソンは抑え目の演技をしても、非常に巧いんですね。ゴールデン・グローブ受賞、アカデミー賞ノミネートも当然な感じ。(この年、アカデミー賞主演男優賞でオスカーを受賞しているのは、『戦場のピアニスト』のエイドリアン・ブロディですが、単純な演技力だけならジャック・ニコルソンが遥かに上回っていると思う)
アメリカのみならず日本人にも通ずるところがあるのでは?と思われますが、定年退職して社会的な存在意義を感じられなくなったり、妻を亡くして悲しみに浸っていたり、娘と喧嘩してやりきれない気持ちなどを、本当に巧く表現している。
これは脚本や監督の演出によるところも大きいと思われます。


オスカーの賢人ことウォーレン・バフェットとの対比


『アバウト・シュミット』の主人公、ウォーレン・シュミットがなんでウォーレンなのかってのにも理由があって、オハマにはウォーレン・バフェットという億万長者の投資家が居ます。
この人がフォーブース誌の長者番付の常連なのですが、劇中のウォーレン・シュミットは保険会社を長年勤め上げ66歳で定年退職した勤勉だけれどどちらかと言わなくても平凡な男だけれど、彼には夢があって、本当は企業家にでもなって、フォーブースなどの表紙を飾りたかったみたいなイメージも挿しこまれてきます。
ウォーレン・シュミットは、ウォーレン・バフェットになりたかったんですね。
だけれどこの映画は、あくまでもどこか哀しい現実を描いています。ブラック・ユーモアに溢れていますね。


ラストでウォーレンに届いた手紙(ネタバレあり)


自分の願望とは裏腹に、娘もランドールのもとに嫁いでしまい、いよいよ孤独を感じ始めたウォーレンのもとに、一通の手紙が届きます。
それは、自分が援助していた慈善団体からの手紙で、ンドゥグはあなたに非常に感謝しており、父のように思っていると。
まだ6歳だから、字の読み書きができないけれど、あなたのことを思いながら絵を描きました。という手紙で、ンドゥグの書いた絵が同封されていました。


この絵が、とても上手とは言えないのだけれど、ウォーレンとンドゥグが手を取り合って笑っている絵で、これを観たウォーレンは涙を流します。(ついでに私も涙します)
この時のジャック・ニコルソンの演技が、今まで抑えてきたものを爆発させるような凄まじさ。
爆発と言っても、あくまで優しく抑えた演出なのですが、重みがまるで違います。
本当に恐ろしい俳優です。このラストシーンのためにあった映画と言っても過言ではなく、このシーンのためだけにオススメします。伝えているメッセージ性自体は辛辣なもののような気がするけれど、非常に心の温まる映画です。


【アバウト・シュミット】関連DVD,ブルーレイなど


初のブルーレイ化(2015年9月2日発売)
アバウト・シュミット [Blu-ray]
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アバウト・シュミット
Excerpt: まじめなサラリーマンだったウォーレン・シュミットにも、定年の日がやって来た。 しかし楽しいはずの第二の人生が、実際はテレビ観賞以外することもなく、妻や娘に対しても不満だらけ。 深い孤独にシュミットは溺..
Weblog: 象のロケット
Tracked: 2015-08-25 07:58