映画『クローサー』マイク・ニコルズ監督が描く悲喜交々な4人の恋愛模様の感想と考察

映画情報


クローサー
(原題:Closer

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製作年:2004年(アメリカ) ジャンル:ドラマ/ロマンス
上映時間:103分


スタッフ


監督:マイク・ニコルズ
脚本:パトリック・マーパー
製作:ケイリー・ブロコウ、ジョン・コーリー、マイク・ニコルズ、スコット・ルーディン
音楽:モリッシー
撮影:スティーヴン・ゴールドブラット
編集:ジョン・ブルーム、アントニア・ヴァン・ドリムレン


出演者


ジュード・ロウ、ジュリア・ロバーツ、クライヴ・オーウェン、ナタリー・ポートマン、and more…


受賞歴


第62回ゴールデン・グローブ:助演男優賞(クライヴ・オーウェン)、助演女優賞(ナタリー・ポートマン)受賞


【クローサー】解説/あらすじ


『バージニア・ウルフなんかこわくない』、『卒業』などで知られるアメリカン・ニューシネマを代表する映画監督マイク・ニコルズによる、2004年製作の大人のラブロマンス。ロンドンで巡り会った4人の男女のすれ違いや恋愛模様を描いたラブストーリー。世界中でヒットした同名舞台劇の映画化で、原作を書いたパトリック・マーパーが脚本を担当。出演は『コールド マウンテン』のジュード・ロウとナタリー・ポートマン、『エリン・ブロコビッチ』のジュリア・ロバーツ、『すべては愛のために』のクライヴ・オーウェン。


イギリス・ロンドン。小説家志望のジャーナリスト、ダン(ジュード・ロウ)は、ある日街中で交通事故にあったアリス(ナタリー・ポートマン)と出逢ったことによって一目惚れし、2人は惹かれあう。同棲を始めて1年半後、アリスをモデルとした小説を執筆し、作家デビューが決まったダンは、写真撮影のために訪れたある撮影スタジオで、フォトグラファーのアンナ(ジュリア・ロバーツ)と出逢い、またしても一目惚れ。アンナもダンに心惹かれていたのだったが、そこにダンを迎えに来たアリスが現れ、アンナは身を引くことに。それから半年後、ダンはアンナになりすまして女言葉を使い、チャットで悪戯。淫らな言葉の羅列に食いついたのは、皮膚科の医師ラリー(クライヴ・オーウェン)。ダンとラリーは水族館で逢う約束をするのだったが、ラリーの前に現れたのは、偶然にもその水族館に居たアンナだったのだが…。


【クローサー】映画感想/レビュー


観たことはないのだけれど、世界中で大ヒットしたらしい舞台劇の映画化らしい大人のラブロマンス『クローサー』。
監督は『バージニア・ウルフなんか怖くない』、『卒業』などの1960年代のアメリカン・ニューシネマで知られるマイク・ニコルズ。
悲喜交々の恋愛模様を繰り広げる4人の男女を演じるのは、ジュード・ロウ、ジュリア・ロバーツ、ナタリー・ポートマン、クライヴ・オーウェンという、今となっては非常に豪華な俳優たち。
ジュード・ロウとジュリア・ロバーツに比べて、当時の俳優としての格的に一つ落ちるナタリー・ポートマンとクライヴ・オーウェンは、それぞれゴールデン・グローブ賞助演男優賞(女優賞)を受賞し、アカデミー賞にもノミネートされています。


マイク・ニコルズというアメリカ映画史に風穴を開けてきた監督


マイク・ニコルズのデビュー作となった『バージニア・ウルフなんかこわくない(1966年)』は、‘Fワード’(放送禁止用語)を初めて使ったハリウッド映画として有名ですが、ヘイズ・コードという過剰なまでの検閲制度、芸術に対する自由の束縛があった当時のハリウッドとしては、今でこそ何とも思わないかもしれませんが、当時としては非常に過激な映画でした。
『バージニア・ウルフなんかこわくない』は、そんなヘイズ・コードの撤廃されるきっかけを作った映画です。


そして翌年に公開された2作目の『卒業』。ダスティン・ホフマンの出世作、サイモン&ガーファンクルによるテーマ曲の‘サウンド・オブ・サイレンス’、教会で結婚式を挙げようとする花嫁をかっさらって2人で消えていくシーンなどで有名ですが、この映画も当時としては非常に過激な映画で、アメリカの映画社会に対する反逆、カウンター・カルチャーとしてアメリカン・ニューシネマというジャンルを築きあげることになった傑作です。
そんな映画を撮ってきたマイク・ニコルズが居なければ、今のハリウッド映画の表現としての自由はもしかしたら無かったのかもしれません。


ナタリー・ポートマンのあるべきはずだったストリップシーン全カット


本作『クローサー』が、再びハリウッド映画に風穴開けたということはありません。本来あるべきはずだったナタリー・ポートマンのストリップシーンが、彼女のエージェントであり母親の意向によって全カットされたことは、映画としては残念でなりません。
ここでそんな母親の意見を突っぱねて公開に乗り切っていたら、この映画の印象もだいぶ変わっていたかもしれません。
一応映倫の検閲によってR-15指定になっていて、ナタリー・ポートマンはストリップしないまでもストリッパー役を演じていたり、生々しい言葉による性描写もありますが、60年代程の衝撃には遠く及ばない。(と言っても私80年代生まれなので、当時の衝撃を知ってるわけでもないんですけど)


難解複雑なストーリー


ダン(ジュード・ロウ)がロンドンの交差点で軽い事故にあったアリス(ナタリー・ポートマン)と出逢い、2人は恋に堕ちて同棲。
それから1年半後、アリスをモデルにした小説で夢の作家デビューを果たしたダンは、撮影スタジオでアンナ(ジュリア・ロバーツ)と出逢い、2人は惹かれあうも、アリスがダンを迎えに来る。
アリスはダンを外に出して、アンナに写真を撮ってもらうのだけれど、ダンとアンナの話を密かに聴いていて嫉妬心を燃やす。アンナはダンを諦めることに…
それから更に半年後、ダンはアンナになりすましたネカマとなって、チャット上で卑猥な言葉を連発し、医者のラリー(クライヴ・オーウェン)を騙して水族館でのデートを約束。
“Nice to meet you”って、あっちでは“Nice 2 meet u”って書いたりするんだ。へー。とかお勉強になったりします。このチャットシーンが中々に面白い。


水族館に訪れたラリーは、そこで偶然にも本物のアンナに遭遇。どういう偶然だよ!とか突っ込みたくなりますが、よく考えてみたら、ダンとアリスやアンナの出逢いも奇跡みたいな偶然。そんな偶然が重なったところで今更驚かない。
この水族館でのやり取りも面白くて、ラリーは騙されていたチャットのノリで、初対面のアンナに卑猥なワードを出しまくります。
アンナは大きな口をポカーンです。“あなた、どこかの誰かに騙されたみたいね。”
ラリーも口ポカーン。“おぅ!なんてこった!こいつは申し訳ない!”という感じになりますが、この2人もなんやかんやで惹かれあうことに…。


ここから先の展開がやけに突飛。急に1年後とかに飛んでみたと思ったら、いつの間にかくっついてたみたいな感じで、本当なのか嘘なのかすらも最初はわからなくなったりして、これはこの映画を難解複雑にさせている要因であったりします。
せめて‘何年後’とかいう字幕でも出ていれば、もう少しわかりやすくなっていたのかもしれません。


4人の感情や心理自体はわかりやすい根源的なもの


この映画で描いていることは、それぞれの嫉妬心と独占欲。そしてもっと原始的で根源的でシンプルな性的欲求という本能。
そこには性別や年齢、社会的な地位やイギリス特有の階級も関係なく。登場人物のそれぞれ、或いは我々人間が殆ど平等に持っているもの。
違いはその感情に対して正直であるか否かであったり、本当のことを言うのか、それとも自分の内でとどめておくのかということだけ。
ここで映画のタイトルの意味が関係してくる。『クローサー(Closer)』には‘より親密な’などという意味があり、4人それぞれが相手に心を許してくっ付きあったりするところは映画のタイトルの意味になってくるけれど、‘Closer’を‘クローザー’と読むと、これが逆の意味となり、‘閉じる人’、‘締めくくる人’という意味になってくる。
タイトルにそういう意味があるのかないのかは知らないけれど、映画的にはどちらの意味にも取ることができます。
最後にアリスは、“ラリーと寝たのか?”としつこく聞くダンに恐らく嘘をついて、‘愛がたった今消えた。もうあなたを愛していない。’と言い、ダンと別れて一人でニューヨークに帰ります。
このラストは、ダンとの関係だけではなく、4人の悲喜交々、ドロドロな恋愛模様に終止符を打って、まさにその関係性を締めくくった行動ですね。
このモヤモヤしたエンディングも、わけがわからないとか賛否分かれそうなところですが、個人的には好きな終わり方で、寧ろこれでよかったんじゃなかろうかと思います。


なんせ恋愛は難しい


男だから女だからということもそうなのですが、それ以前に人間それぞれに違う生き物なので、価値観が100%合致することなんて有り得ないと個人的には思います。
だからこそ、恋愛なんてものは幸せなときは幸せだけれど、辛いときはひたすら辛いものです。
そこで、結局他人の違う人間同士だからこそ、相手や自分のダメなところも認めて受け入れるなり、いい意味で妥協ができないのであれば、そんな関係ぶっ壊してしまえばいいと思う。
105分程度の映画の中でドロドロでゴチャゴチャした複雑っぽい関係性を描いてはいるけれど、結論から言えば30秒くらいで終わる話。
出逢った。くっついた。別れた。くっついた。別れた。違う人に出逢った。惚れた。はれた。でもやっぱりあなたが好き。でも…どうしたら…。ゴチャゴチャゴチャゴチャやかましい!


アリスの本名とラストシーンの考察


しかし恋は盲目。ラストの壁に刻まれた火事場から人命救助をした上で亡くなった人の名前がアリス。
アリスは最初からダンに真実を語らず嘘をついていたということなんだと思います。
本名はラリーとストリップ・クラブで交わした中で出てくるジェーン。
アリス(ジェーン)は、最後に赤信号のままにも関わらず、颯爽と歩き続けるのですが、もしかしたらアリスは、自らの人生にも終止符を打とうとしていたのかもしれません。
それも最後ではなく、最初からそうするつもりだったのかもしれない。そう考えると、作品の良し悪しは置いといても、いかにもマイク・ニコルズらしくアメリカン・ニューシネマ的であり、感慨深いラストである。


【クローサー】関連DVD,ブルーレイなど


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Tracked: 2015-08-18 21:22