映画『アパートの鍵貸します』ビリー・ワイルダー監督によるロマンティックコメディの傑作

映画情報


アパートの鍵貸します
(原題:The Apartment

The Apartment poster.jpg
製作年:1960年(アメリカ) ジャンル:コメディ/ロマンス/ドラマ
上映時間:125分


<スタッフ>
監督:ビリー・ワイルダー
脚本/製作:ビリー・ワイルダー、I・A・L・ダイアモンド
音楽:アドルフ・ドイッチ
撮影:ジョセフ・ラシェル


<出演者>
ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン、フレッド・マクマレイ、レイ・ウォルストン、ジャック・クラッシェン、and more…


第33回アカデミー賞:作品賞、監督賞、脚本賞、美術監督・装置賞(白黒)、編集賞
第21回ヴェネチア国際映画祭:女優賞(シャーリー・マクレーン)受賞
その他多数受賞&ノミネート


【アパートの鍵貸します】解説/あらすじ


アカデミー賞5部門他、多数の賞を受賞&ノミネートされた、『情婦』、『お熱いのがお好き』のビリー・ワイルダーが、監督/脚本/製作を務めるロマンティックコメディの代表的作品。サラリーマンの男の苦労と恋愛模様をユーモラスに描く。主演は『お熱いのがお好き』のジャック・レモン。ヒロイン役に『ハリーの災難』のシャーリー・マクレーン。共演に『深夜の告白』のフレッド・マクマレイ、『くたばれ!ヤンキース』のレイ・ウォルストンなど。アメリカ国立フィルム登録作品。


ニューヨークの大手保険会社に勤める、数字の計算が得意な平社員の通称バドことバクスター(ジャック・レモン)は出世欲に燃えていた。4人の上司に対して、愛人との密会用に自分の住んでいる安アパートの鍵を渡し、部屋を貸す毎日。ある日バクスターは、人事部長のシェルドレイク(フレッド・マクマレイ)に呼び出され、バドに対する不自然な好評価に対して疑念を抱かれるのだったが、シェルドレイクはこれを利用してバクスターに昇進の話を持ちかけ、自分も4人の中に割り込んでアパートを借りることに。目先の出世に目が眩んで気をよくしたバクスターは、密かに思いを寄せていたエレベーターガールのフラン(シャーリー・マクレーン)を映画に誘う。先約のあったフランは、約束を済ませてからバクスターと落ち合うことを約束したのだった。しかし、フランの先約の相手とは、出世と引き換えに部屋を借りることを約束したシェルドレイクであり、デートの約束にもフランは現れず、ついにはバクスターも、フランとシェルドレイクの関係に気づいてしまうのだったが…。


【アパートの鍵貸します】映画感想/レビュー


『深夜の告白』、『失われた週末』、『サンセット大通り』、『麗しのサブリナ』、『情婦』、『お熱いのがお好き』等々、数々の傑作を生み出してきたアメリカを代表する映画監督/脚本家/プロデューサーのビリー・ワイルダーによる社会派ロマンチック・コメディ『アパートの鍵貸します』。
主演は、戦後最高のコメディアンと誉れ高いジャック・レモンと、キュートで愛くるしい魅力満載のシャーリー・マクレーンの2人。
アパートの鍵貸します ジャック・レモン シャーリー・マクレーン.jpg


ロマンティックコメディで包み込む社会問題


ビリー・ワイルダー監督作品の多くは、サスペンスであれヒューマンドラマであれコメディであれ、社会問題をテーマにした社会派映画が多数あるのですが、『アパートの鍵貸します』というロマンティックコメディの中にも、社会的な問題が大胆に盛り込まれています。
ジャック・レモン演じるバクスターが勤める保険会社の上司達が、ことごとく自分の妻や家族に対する不貞行為を働いて不倫に走っていることがまず問題。
出世のためとは言えど、そんな上司達に自分の済んでいるアパートの鍵を渡し、部屋を自由に使わせて、不倫の手助けをしてしまっていることも問題。
仕事に集中せず、4人(途中から5人)に部屋を貸すスケジュールの管理に明け暮れているのも問題だし、そうやって上司の機嫌を窺っていれば、仕事ができるできない関係なく、容易に出世できてしまうことも問題。


オマケに、登場人物のことごとく殆どが、そろいも揃って自己中心的な人たちばかりで、相手のことなんてお構いなし。
ロマンティック・コメディとしてユーモラスに描いてはいるけれど、実際のところは、社会に対する辛辣なメッセージが投げかけられています。
シャーリー・マクレーン演じるフランと、フレッド・マクマレイ演じるシェルドレイクが不倫関係にあると知ったバクスターは、ショックを受けてバーで自棄酒を喰らうのですが、そこでバクスターに関心を示した女が、夫が捕まってハバナにいるんだけれど、カストロが恩赦を与えてくれないから会えなくて寂しい云々という話をします。
このカストロというのは、キューバのフィデル・カストロ評議会議長のことですが、当時のキューバ革命や、アメリカとの関係性が悪化していったことなどの社会的な時事ネタを放り込んできています。


奴隷から人間としての尊厳を取り戻すバクスター


会社では上司の駒となり、ご近所さんには女たらしと勘違いされても好きな相手を庇い、上司までもを庇うお人よしのバクスター。
社会にとっての奴隷みたいな存在として描かれていますが、それでも最後には一人の男として人間らしく立ち上がるバクスターの姿が描かれ、フランとくっつきます。
失うものも大きかったでしょうが、このバクスターの変化は人間としての尊厳を取り戻したものであり、得たものの方が遥かに大きく、地味ではあるかもしれないけれど、清々しい感動的なエンディングのように思うと同時に、やはり当時のアメリカの資本主義に対する痛烈な批判にもなっています。


劇中でバクスターがテレビで観ている映画


バクスターが部屋でチキンか何かを食べながら、TVの映画を何チャンネルかザッピングすると、いくつかの映画が放送されています。
この時映っている映画は、グレタ・ガルボ、ジョン・バリモア、ジョーン・クロフォード出演の『グランド・ホテル』、ジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演の『駅馬車』、スティーブ・マックイーン主演のテレビドラマ『拳銃無宿』などです。
バクスターは始め『グランド・ホテル』を観ようとするのですが、監督や出演者を紹介して直ぐにCMが入り、その間ザッピング。再び『グランド・ホテル』のチャンネルに戻すも、またしても紹介のあとにCMで、嫌になって観ることすら放棄しちゃいます。このシーンって、『グランド・ホテル』での群像劇を、バクスターのアパートの部屋でおこる話とリンクさせているんですかね。


コメディとしてもやはり秀逸


数々の小道具が効果的に使われている映画です。分厚い電話帳をクルクルしながらスケジュール長にせっせとメモを取るバクスターの姿は滑稽極まりないし、割れた鏡を見てシェルドレイクとフランの関係に気づいてしまうバクスターや、その鏡が映しているのが本当の自分だというフランの台詞は、悲哀に満ちている。
その他、帽子や点鼻薬、トランプのカード等々の小道具が効果的に使われていて、脚本の巧さに驚かされますが、なんと言ってもテニスラケットを、茹で上がったパスタの湯切りに使うというシーンが凄く笑えます。
社会的なテーマを包みつつも、コメディ映画だということを忘れず、その中にペーソスまで混ぜ込んでくるところあたり、チャップリンの映画を彷彿とさせます。


ビリー・ワイルダーの代表作にしてロマンティックコメディの中でも最高傑作のひとつに数えられる『アパートの鍵貸します』ですが、モノクロの映画でありながら現代人が観ても十分に面白いどころか、仕事に追われて社畜だ何だと騒がれる今だからこそ、観るべき映画なんじゃないかなと思います。
数々のこ洒落た台詞・名言もいいですね。


【アパートの鍵貸します】関連DVD,ブルーレイなど


20世紀FOX‘吹き替えの名盤’シリーズ(2015年9月2日発売)
アパートの鍵貸します(テレビ吹替音声収録)HDリマスター版 [DVD]
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Excerpt: 上役の情事の為に自分のアパートを貸しているしがない会社員バド。それもみんな出世のため。だが、人事部長がつれ込んできたエレベーターガールの女性フランは、バドの意中の人だった…。 傑作ラブロマンス。
Weblog: 象のロケット
Tracked: 2015-08-18 22:01