映画『野いちご』死や孤独を踏まえた人生をテーマにしたベルイマン監督によるロード・ムービー

映画情報


野いちご
(原題:Smultronstället
(英題:Wild Strawberries

野いちご ポスター.jpg
製作:1957年(スウェーデン) ジャンル:ドラマ
上映時間:91分


<スタッフ>
監督/脚本:イングマール・ベルイマン
撮影:グンナール・フィッシェル
音楽:エリック・ノードグレーン


<出演者>
ヴィクトル・シェストレム、ビビ・アンデショーン、イングリッド・チューリン、グンナール・ビョルンストランド、マックス・フォン・シドー、グンネル・リンドブロム、and more…


<受賞歴>
第19回ヴェネチア国際映画祭:イタリア批評家賞
第8回ベルリン国際映画祭:金熊賞
第17回ゴールデン・グローブ:外国映画賞


【野いちご】解説/あらすじ


‘映像の魔術師’と歌われるスウェーデン映画界の巨匠、イングリッド・バーグマン監督の『第七の封印』と並ぶ1950年代の代表作。スウェーデン映画界の父と呼ばれる映画監督、ヴィクトル・シェストレムを主演に迎えた、人間が生きている以上関わることになる普遍的なテーマを主軸に描くヒューマン・ドラマ。ここ日本も含めて各国で大絶賛され、数々の賞を受賞している。


妻に先立たれ、子供も自立たため、家政婦と共に生活をしていた78歳になる孤独な労医師イサク(ヴィクトル・シェストレム)は、長年に渡る業績を称えられ名誉博士号の称号を授かるべく、ルンド大学での授賞式に出席することになっていたのだが、その前夜、自らの死を暗示するような夢を見る。始めの予定では、飛行機に乗ってルンドへ向かう予定だったのだが、不安に思ったイサクは車で現地へ赴くことに。息子の妻であるマリアンヌ(イングリッド・チューリン)が同行することを申し出て、息子夫婦と道中を共にすることに。途中、過去の思い出を手繰り寄せるように回想するイサクだったが、その思い出はいいものばかりでもなかった…。


【野いちご】映画感想/レビュー


スタンリー・キューブリックが影響を受けた映画、或いは好きな映画ベストテンの2位に上げているイングマール・ベルイマンの名作『野いちご』。
イサク教授が観る夢のシーンから、『』のモチーフであるシュールレアリズム的な不気味で恐ろしい描写が満載。針のない時間の止まった時計、無人の馬車、表情を成さない顔の潰れた異型の人物、そして自らが入っている棺桶。
そんな不安極まりない夢を見た翌日、イサク教授は息子やその妻を伴って遠くの地へ車で赴くことに。


老人が主人公のロード・ムービーというと、デヴィッド・リンチ監督としては異色ともとれるハートフル・ウォーミングなロード・ムービー『ストレイト・ストーリー』という映画がありますが、それこそリンチが描きそうな夢やら回想の世界が、ベルイマンの『野いちご』でやられてた。(ストレイト・ストーリーは、芝刈り機に乗って旅に出ることこそシュールだけれど、他はいたって全うなストレートなお話(そして実話が基になっている))


とは行っても、この映画がシュールすぎて難解であったり不条理だったりするというわけではありません。双子が出てきたり、過去の自分達のそっくりさんに出逢ったりしますが、その全ては一日の旅の中で振り返る、78年の自分の一生。


双子といいますと、キューブリックの『シャイニング』に出てきたりする、とても人を不安にさせる要素の一つですが、ここでは勿論主人公のイサクが不安になるんですね。
でもそれは、もしかして自分は死んでしまうのではなかろうか?という『死』そのものに対しての恐怖ではなくて、『死』に向かうに際しての今までの自分の行い。
“自分は気難しい人間で、家族にすら心を許すことのない孤独な人生を歩んできた”というように、その行いに対して、「これでよかったのか?」という不安。


そしてこの映画は、そんなイサクが、旅を通して変わっていく物語。というか、安らかな死を迎えるための贖罪の物語。
野いちご 鏡.jpg
この映画もベルイマンの中にあっては『処女の泉』と同等にわかりやすい映画です。(と言っても私、『野いちご』、『第七の封印』、『処女の泉』しか観たことありませんけどね。TSUTAYAあたりに発掘良品で出してとお願いしようかと思います)


悲しい怖い映画のようで、その実は全くの逆で、心温まる映画として描いているところがこの映画の凄いところ。相変わらずの詩的表現、言葉で説明するより判りやすい映像表現も流石。


ベルイマン以前にスウェーデン映画の父と呼ばれた映画監督ヴィクトル・シェストレムが、『野いちご』での好演を最後に亡くなられたことも、非常に感慨深いものがあります。
『孤独』や『死』をネガティブなものと捉えず、あるがままに受け入れていく様子は、『第七の封印』と同じく実存主義的な哲学を感じさせます。

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