映画『永遠の0』百田尚樹の原作には勝てないけれど

映画情報


永遠の0
THE ETERNAL ZERO

永遠の0 ポスター.jpg
製作年:2013年(日本) ジャンル:戦争/ドラマ
上映時間:144分


<スタッフ>
監督:山崎貴
原作:百田尚樹(永遠の0)
脚本:山崎貴、林民夫
製作:遠藤学、筒井竜平、守屋圭一郎、柴崎幸三
音楽:佐藤直紀
主題歌:サザンオールスターズ(蛍)
撮影:柴崎幸三
編集:宮島竜治


出演者:岡田准一(V6)、三浦春馬、井上真央、吹石一恵、風吹ジュン、夏八木勲、and more…


<受賞暦>
第38回日本アカデミー賞:作品賞、主演男優賞(岡田准一)、監督賞(山崎貴)、撮影賞、照明賞、美術賞、録音賞、編集賞受賞


【永遠の0】解説/あらすじ


百田尚樹のベストセラー小説『永遠の0』を、『ALWAYS 三丁目の夕日』の山崎貴監督で映画化。特攻隊として戦死した‘海軍一の臆病者’と言われた零戦パイロットの真実を描いた戦争ドラマ。主演は『図書館戦争』の岡田准一。共演に『キャプテンハーロック -SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK-』の三浦春馬、『八日目の蝉』の井上真央など。


司法試験に落ちて人生の道を失いかけていた佐伯健太郎(三浦春馬)は、ある日実の祖父は、太平洋戦争の最中、特攻隊員として戦死した宮部久蔵(岡田准一)であるという真実を聞かされる。そのことが気にかかり、姉の慶子(吹石一恵)と共に宮部のことについて調べるべく、かつての戦友達に話を聞いてまわったところ、宮部は天才的な操縦技術を持ちながら、死を恐れ生きることに固執する‘海軍一の臆病者’と言われる人物だった。そんな宮部が何故、特攻隊志願したのか…。話を聞いて回るうちに驚くべき真実が浮かび上がってくるのだった。


【永遠の0】映画感想/レビュー


私事ですが、先日(2015年7月20日)、私の母方の祖父が亡くなりました。享年89歳。
第二次世界大戦時は10代前半から半ばくらいの年齢だったということになりますので、『永遠の0』に出てくる主人公、宮部久蔵(岡田准一)よりは少し下の世代で、軍人として戦った云々とはないと思われますし、祖父から戦争の話を聞いた記憶もそんなに多くはありません。
私自身は、佐伯健太郎(三浦春馬)や慶子(吹石一恵)などの、戦争を経験したこともなければ、戦争の話を熱心に聞いたことがある立場でもないということになります。


祖父が他界してしまったから云々でこの映画を取り上げたわけでも特にないのですが、この映画の最後の方で語られる、“我々の世代も後10年もしたら殆どいなくなる”的な台詞を聞いて、祖父のことを考えました。
告別式の日に、お坊さんが“激動の世の中を生きて云々”というお説教をされていたのですが、祖父が戦時下でどういう生活を送っていたのか、そこまで詳しくは知らないにしても、現代とは明らかに違う世代の苦しみの中で生きてくれた上で、母が生まれて、私が生まれて、今の生活があるのだと考えると、今生きてることは決して当たり前のことではないのだなと考えさせられます。
勿論、現在は現在で、それなりの苦しみや不安、不満等々ありますけどね。ただ祖父に関しては、感謝しかありません。


さて『永遠の0』、百田尚樹氏の小説デビュー作にしてベストセラー小説の映画化ですが、小説の方も多方面で賛否両論ありますね。戦争賛美だとか、特攻の美化だとか云々くんぬん。
個人的には原作も読みましたが。決して戦争賛美と特攻の美化とも読み取れなくて、素直に感動しました。小説の文学としてどないやねん?って話になりますと、確かにいかにもお涙頂戴的で、ファンタジーみたいにできすぎた話なのかなと思います。売れて当然なのかな?とも思いますけれど、私達というか私自身が、なんで今生きてられんのか?ということは、少なからず考えさせられました。


『永遠の0』の映画化もだし、近年は第二次世界大戦を舞台とする映画沢山作られています。
戦争法案と呼ばれる安保法案の強行採決の影響かどうかは知りませんが、2015年7月31日に金曜ロードSHOW!で本作の地上波放送をやったりしますし、8月8日には『日本のいちばん長い日』の2015年版が公開されます。
安保法案云々の是非を個人的に云々言う気は全くありませんが、今を生きる現代日本人は、少なからず、周りが何を言ってるかとか何をやってるかではなくて、‘個人’として戦争とは何かを知り、どう思うかを考えるべきだと思います。
そういう意味でも、人間の考え方や感じ方が千差万別である以上、百田尚樹氏の原作及び映画が賛否両論を巻き起こしているのは健全なことだと思います。ただそれが全く的外れな批評や感想で、挙句の果てに売り言葉に買い言葉みたいな子供じみた展開になってる論争が巻き起こってるのは悲しい。


映画版『永遠の0』は、小説版とは少し違っています。正直この映画、小説版には到底かないません。特にラストでは、よりファンタジー色が強くなって、エンターテイメント的になっています。このシーン、日本アカデミー賞主演男優賞を獲った岡田准一が、零戦に乗って健太郎の前に突如として現れて、過去に飛んで特攻して『永遠の0』という表記で終わるシーンですが、素直に感動しました。
感動したのだけれど、特に健太郎が久蔵の幻影を見るシーンはいらなかったかなと思います。もっとシリアスにしたってもよかったのではないか。


久蔵の背景を描く描写があまりないのも問題で、何故に最終的に特攻を志願したのかという動機や、何故に天才的な操縦テクニックを持つようになったのかということが、わかりにくいと言えばわかりにくい。
ただ、個人的には映画ではそれほど説明的にする必要もなく、ある程度映像を観て受け取る描写があるべきたと思うので、これはこれでいいのかなと思ったりもする。
小説版に出てきた朝日新聞記者が出てこず、健太郎の友達との合コンで、友達が“特攻隊ってテロリストと一緒”というシーンは、素直に記者に言わせれていればなと思ったりもする。
マスコミの考えを、日本の映画では描きにくい(批判しにくい)というのは、非常に残念なことだと思う。


エンディングの『永遠の0』の表記と、少しの静寂が無茶苦茶イイ映画なのだけれど、その後にエンドロールと共に流れる、『蛍』なるサザンオールスターズの曲(桑田佳祐の声)。サザン及び桑田圭祐ファンには申し訳ないけれど、これは最悪。余韻もへったくれもあったもんじゃない。桑田云々ではなく、それこそ『アメリカン・スナイパー』みたいに、殆どずーっと静寂とかでもよかったんじゃないかと思う。余計なタイアップで映画の印象を損ねてしまうのは非常に残念。


それなりのマイナス要素がありながらも、色々な柵がある中でここまでの映画を作ったことは素直に凄いことだと思います。このような映画で語る感想でもないかもしれないけれど、岡田准一が、ジャニーズ云々関係なく素晴らしい演技をしているしカッコよかった。更に、戦友を演じたベテラン俳優達の演技も素晴らしく、重たい話を軽くすることなく、シリアスに伝えられているのもいい。

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