映画『ゴーン・ガール』ロザムンド・パイクの怪演とフィンチャーの皮肉で綴る胸糞ミステリー

映画情報


ゴーン・ガール
(原題:GONE GIRL

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製作年:2014年(アメリカ) ジャンル:ミステリー/サスペンス/ドラマ
上映時間:149分


<スタッフ>
監督:デヴィッド・フィンチャー
原作/脚本:ギリアン・フリン
音楽:トレント・レズナー/アッティカス・ロス
撮影:ジェフ・クローネンウェス
編集:カーク・バクスター


<出演者>
ベン・アフレック、ロザムンド・パイク、ニール・パトリック・ハリス、タイラー・ペリー、キム・ディケンズ、キャリー・クーン、ミッシー・パイル、and more…


【ゴーン・ガール】解説/あらすじ


『KIZU―傷―』、『冥闇』などで知られるギリアン・フリンの同名ベストセラー小説を、『ソーシャル・ネットワーク』、『ドラゴン・タトゥーの女』などの鬼才デヴィッド・フィンチャー監督で映画化。妻の突然の失踪事件をきっかけに、過熱報道や警察操作によって精神的に追い込まれていく夫の姿と衝撃の展開を描く。主人公の夫婦を演じるのは、『アルゴ』で監督と製作も兼任しているベン・アフレックと、『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』のロザムンド・パイク。共演に『荒野はつらいよ 〜アリゾナより愛をこめて〜』のニール・パトリック・ハリス、本作が長編映画デビューとなるキャリー・クーンなど。


ミズーリ州の田舎町。結婚5年目を迎えた7月5日の記念日の朝、ニック・ダン(ベン・アフレック)が経営するバーから家に帰ってみると、妻のエイミーが消えていた。突然の失踪にニックはすぐさま警察を呼ぶ。エイミーがアメリカ中で愛される‘アメイジング・エイミー’のモデルであったことや、部屋に荒らされた形跡があったことなどから、警察は直ぐに捜査を開始し、ニックには記者会見を開くよう促すのだったが、マスコミが押し寄せ、報道は過熱していく。次第に、不可解な言動を示すニックに対して、妻殺しの嫌疑がかけられていくのだったが…。


【ゴーン・ガール】映画感想/レビュー


『セブン』や『ファイト・クラブ』などで知られる天才、デヴィッド・フィンチャー監督による胸糞ミステリー映画『ゴーン・ガール』。
ゴーン・ガール(Gone girl)とは、‘行ってしまった女’という意味で、つまり失踪した女ですけれど、この映画においては、‘イっちゃってる女’の方がしっくりきますね。
妻のエイミーを演じたロザムンド・パイク、『17歳の肖像』や『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』に出演していた女優さんで、オスカー本命とも言われていましたが、結果的には『アリスのままで』のジュリアン・ムーアが第87回アカデミー賞主演女優賞もっていきましたね。
『アリスのままで』はこっち(愛媛)方面ではまだ上映されていなくて(田舎はこれだから困る)、まだ観れていないのでなんとも言えませんが、ロザムンド・パイクが物凄い演技しています。
DVDやブルーレイの解説でデヴィッド・フィンチャー監督自身も言っていますが、綺麗な女優さんで出ている映画もわかるのですが、どんな演技してたか?となると、思い出すのが大変なくらいの女優さん。もしかして今まで存在感をあえて消してたのか?と思うくらい、本作では印象的すぎる演技をしています。寧ろ怖いよ。震えちゃうよ。


原作はギリアン・フリンの『ゴーン・ガール』で、イヤミス、つまり後味の悪いミステリーの傑作と言われていますが、映画の方も物凄く胸糞な、後味の悪い結末となっています。
ニューヨークから夫のニック/a.k.a.ケツアゴの母親の病状の悪化に伴って、ミズーリの田舎に引っ越してきた夫妻。誰もが羨むような幸せそうな夫妻の妻が、結婚5年目の記念日のその日に失踪。
警察が捜査して、捜索のための記者会見を開き、ご近所さん達もボランティアで参加して、マスコミでが連日報道されっぱなし。
次第に夫がマスコミに叩かれ始めます。妻が大変な時に、夫はニコニコ笑って、本当に心配してんのか!みたいなのとか。番組のキャスターは、早速夫が犯人なんじゃないか?とか決め付けにかかるわけですが、この辺り、夫のニックを演じているのがベン・アフレック/a.k.a.ケツアゴだから、妙なリアリティがありますね。


ベン・アフレックさん、女優で歌手のジェニファー・ロペスと付き合っていた当時、人目もはばからず幸せ状態を晒して婚約までするんだけれど、破局。更に疑惑のパーティーがどーたらで、マスコミにだいぶ叩かれたり、ジェニロペとの共演作である『ジーリ』ではラジー賞で最低男優賞、最低女優賞をカップルで共に受賞した挙句、最低スクリーンカップル賞まで受賞して、当然興行的にも批評的にも大失敗。これまで積み上げてきたものが一挙に崩壊しました。
だからなのか、ベン・アフレックがマスコミや近寄ってきた人にまで叩かれまくるのがやたらとリアル。というか、番組のキャスターのエレン・アボットを務めたミッシー・パイルも凄く怖いよ。平気で決定的な根拠もなく人の人生を潰しにかかる。そういう意味では日本のマスコミも大して変わったようなものでもないと思いますが、アメリカでは実際にこんな番組があって、番組がきっかけでおこってしまった事件まであるそう。そういうものに対して、完全にブラック・ユーモア的な要素がこめられた映画ですね。


【以下ネタバレだらけです】


失踪事件にかかわる犯人は、夫のニックでもその他の誰でもなくて、ロザムンド・パイクが演じた妻のエイミー自身なんですね。
ニックも浮気していたりということを隠して嘘を突き通してたんだけれど、エイミーの嘘はそれをはるかに上回っていて、夫や警察やマスコミが、何を考えてどのように捜査して、どんな感じで報道するかまで全て計算していて、警察に見つけてもらえるように仕込んだ日記には嘘を書き並べて同情を買いまくり。
しかもこれが全てが嘘というわけではなく、真実の中に嘘を混ぜ込んでいるものだから、何が嘘で何がホントなのか、少なくとも映画の前半から中盤にかけての部分では、観客は完全に混乱させられちゃいますね。


しかし中盤以降、エイミーの5回目の結婚記念日の7月5日以降の動きを主体に映し出してからは、どんでん返してエイミー豹変。『真実の行方』のエドワード・ノートンくらい豹変。この女、とんでもないファム・ファタールである。『氷の微笑』のシャロン・ストーンみたいなもん。(映画評論家の町山智浩さん曰く‘パンツを履いていない女の人が主演の話’)


映画のテーマの一つは、夫婦とは、結婚とは何なのか?です。その結婚を、フィンチャーは何か妻や結婚に対して恨みでもあんのか?というくらいに嫌な感じで描いているんですね。
昔の偉大な哲学者や科学者、作家など、偉人と呼ばれる人たちは、色々な名言を残したりしていますけれど、結婚に関してのその殆どは、ネガティブな発言ばかり。


“結婚とは人生の墓場である”
“あらゆる人知のうちで、結婚に関する知識が一番遅れている。”
“結婚とは、男性が自己の権利を半減し、自己の義務を倍加させることである。”
“結婚…いかなる羅針盤も、かつて航路も発見したことがない荒海。”

などなど、他にも数知れず結婚に関するネガティブな名言が山のようにありますが、これを聞いて結婚したいと思う奴なんかいんのかね?ということを、フィンチャー監督は映画化しちゃっています。やりすぎくらいの演出で。怖すぎます。エイミーに関しては、‘アメイジング・エイミー’として、常にエイミーを演じてきちゃってるから、演じることが人生になっちゃってる始末。
ゴーン・ガール ロザムンド・パイク.jpg


ケツアゴさんも、エイミーと出合った頃のように、ずっと臭い台詞を放ちまくる非現実的なナルシストを演じきっていたら、幸せな夫婦生活があったのかもしれないけれど、生まれながらにずっと演じてきているわけじゃないから、中々うまいこといきませんよね。演じることに疲れてきちゃう。だから最初から自分らしく接するべきなのですが、はて?自分らしさとは何かね?とか思ってみたり。
そこが結婚、夫婦の難しさでもあったりするのかもしれません。仮面を被ったまま長年一緒に居続けるというのは大変なことです。なので私も結婚して10年になりますが、妻に怒られたら素直に謝り、仮面をとるどころか、パンツ履いてない。いや履いてますけど。


なんせ、あらゆる皮肉が込められた映画です。結婚にしろマスコミの在り方にしろ、警察の駄目具合にしろ、弁護士の利己主義的な立ち回りにしろ、親ですらも自分の利益になることしかしないし、見たいものしか見えない。見ようとしない。自分が一番可愛い。それが人間。
そんな皮肉だらけの人間の精神・心理・内面を抉り出すような映画。だからこの映画は胸糞悪いし怖いんです。


【ゴーン・ガール】関連DVD,ブルーレイなど


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