映画『ロレンツォのオイル/命の詩』副腎白質ジストロフィー(ALD)という難病と戦った親子の愛

映画情報


ロレンツォのオイル/命の詩
(原題:Lorenzo's Oil

ロレンツォのオイル ポスター.jpg
製作:1992年(アメリカ) ジャンル:ドラマ 上映時間:129分
監督:ジョージ・ミラー
脚本:ジョージ・ミラー、ニック・エンライト
出演者:ニック・ノルティ、スーザン・サランドン、ザック・オマリー・グリーンバーグ、ピーター・ユスティノフ、キャスリーン・ウィルホイト、ジェリー・バマン、ローラ・リニー、and more…


【ロレンツォのオイル/命の詩】解説/あらすじ


富士の病である副腎白質ジストロフィー(ALD/Adrenoleukodystrophy)という難病に苦しむ愛する息子を救うべく、解決策を探し求めて奮闘するオドーネ夫妻の実話に基づいた感動のヒューマンドラマ。監督を務めるのは、『マッドマックス』シリーズで知られるジョージ・ミラー。オードネ夫妻を、それぞれ『サウス・キャロライナ/愛と追憶の彼方』のニック・ノルティと『テルマ&ルーイズ』のスーザン・サランドンが演じる。


1983年、アフリカのコモロ共和国で両親と幸せに暮らしていたロレンツォ(ザック・オマリー・グリーンバーグ)は、銀行員である父のオーギュスト(ニック・ノルティ)が仕事の都合で転勤することとなったため、家族と共にアメリカへ移り住むことになったのだが、凡そ三ヵ月後、ロレンツォは理由もなく暴れるなどの奇行を見せはじめたため、病院で診てもらうことにしたのだったが、副腎白質ジストロフィー(ALD)という不治の難病に侵されていることが発覚。食事療法や薬による治療こ試みるも病状が回復することはなく、悪化していくばかり。ALD患者家族の会に出席した時に、この難病の重さから半ば諦めムードを漂わせていた他の家族に失望したオードネ夫妻は、なんとしてもロレンツォを救うべく、自分達の力で治療法を見つけようと固く誓い、早速文献を読み漁るなどの行動に出るのだったが…。


【ロレンツォのオイル/命の詩】映画感想/レビュー


2015年7月19日現在、ジョージ・ミラー監督による『マッドマックス 怒りのデス・ロード』という、とんでもないアクションシーン連発の映画が大ヒット上映中ですが、そんなバイオレンスな『マッドマックス』シリーズを手がけるジョージ・ミラー監督が撮っているとは思えない映画の一つが、この『ロレンツォのオイル/命の詩』です。


ジョージ・ミラー監督は、他にも『ベイブ/都会へ行く』や『ハッピー フィート』などのハートフル・ウォーミングな映画も撮っている監督なんですよね。とても『マッドマックス』シリーズと同じ監督が撮っているとは思えないという。
主演のニック・ノルティとスーザン・サランドンも、実に多彩な役柄をこなす名俳優ですね。


アフリカのコモロ共和国で過ごしていたオドーネ一家は、銀行員の父、ニック・ノルティ扮するオーグストの転勤により、アメリカで住むようになるのですが、3ヶ月後に息子のロレンツォ(ザック・オマリー・グリーンバーグ)が、「学校で理由もなく暴れだしたと」と、スーザン・サランドン扮する母のミケーラに教師から告げられます。
家でも学校でも暴れだすロレンツォを心配したオドーネ夫妻は、ワシントンの小児科にロレンツォを診せに行くのだけれど、そこでは残酷なことに、余命二年を過ごせたら上出来という不治の難病、副腎白質ジストロフィー(ALD)という難病に侵されていることを知らされてしまいます。


【副腎白質ジストロフィー(ALD)という難病について】


副腎白質ジストロフィー(ALD/Adrenoleukodystrophy)とは、先天的な脂質代謝の異常によって、長鎖脂肪酸という物質が正常に代謝されないせいで、中枢神経系という多数の神経細胞が集まっている場所の髄鞘(ミエリン鞘)という神経伝達機能を高速化する役割を持つ物質が剥離されてしまい、脳内の白質という部位が傷つけられ、ヒステリー症状に始まって、次第に学力低下や無言症、歩行障害、失明などの症状を招き、約二年には命を落としてしまう確立が非常に高い不治の難病です。


人間にとって、当たり前のようでも最大の幸せというものは、親が逝き自分が逝き、自分の子供が逝きと、順番どおりに自然の摂理にしたがってこの世を去ることだと言います。
親より先に逝ってしまうことほど親不孝なことはない。自殺なんてものは言語道断だと思います。
もしも、自分の子供が事故で重症を負ったとか亡くなったとかしたら、あなたは相手を許すことができますか?
大概の親なら、愛するわが子が傷つけられて、正気でいられる人は居ないと思います。
もしも自分の子供が、自分の血(遺伝子)のせいで不治の病という重病に冒されてしまったとして、あなたは自分自身を許すことが出来ますか?
私なら、きっと自分を憎み、自暴自棄になり、この世の不幸を一身に背負ったような気分になってしまうことでしょう。
副腎白質ジストロフィーの原因は、母親からの遺伝です。


『ロレンツォのオイル/命の詩』は、実話を元にした映画ですが、ロレンツォは、自分の母であるミケーラからの遺伝によって、ALDという難病に、何も知らないまま侵されてしまいました。
ミケーラは医師に告げられるまで、自らの遺伝子の中にALDなどという男児のみに感染する遺伝子を持っているなどと知る由もありませんでした。
しかし、無常にもその事実は、背負え切れないような十字架となって、ミケーラは勿論のことながら、オドーネ家に圧し掛かることとなります。


きっと誰もミケーラを攻めることなんてできないんだけれど、「なんでウチの息子なんだ」という気持ちは芽生えると思いますし、ミケーラに限って言えば自責の念も相当に強かったものと思われます。
ロレンツォのオイル スーザン・サランドン ニック・ノルティ.jpg


そんなミケーラを、気丈に演じきったスーザン・サランドンが素晴らしい演技をしています。
これがメソッドアクターと言うべきなのか、兎に角、異常なまでに息子を思う気持ちは、スーザン・サランドンが演技でやってるとは思えない程に自責の念が透けて見えるようで非常に辛い。
実際その立場に立たないと、共感し辛いのは事実だと思いますが、共感できないくらいに重たい現実を背負っているんだから当然と言えば当然のことです。


ニック・ノルティが演じたオーギュストの演技も、もはや演技の領域を超えているくらいに凄まじいものがあります。まさに奇演という感じで、ALDに関しての書物を読んでいる時の彼の苦悩を直視するのはあまりにも痛々しい。
そして、ロレンツォを演じたザック・オマリー・グリーンバーグは、子供ながらに怖いです。
ここら辺に、人間の暴力性を描くことが得意なジョージ・ミラーの片鱗を垣間見ることができます。


単に感動したというのは非常に簡単なのですが、これは安易なお涙頂戴で作られたような映画ではありません。
勿論、『実話』というテーマが存在しますので、そこから大きく逸脱することもできないし、実話を描いているだけと言えばそれまでなのですが、命の尊さとか、人の尊厳とか、日本人にはわかりにくいであろう宗教感などについて、非常に重たく考えさせられる映画でもあり、また、諦めないことの先に見える光に対しての希望も抱ける映画です。


特に、この夫妻がこの不幸に向き合ったとき、宗教に縋ることなく(否定もしない)自らの足で立ち、自らの眼で見、自らの手で行ったことは、非常に強くもあり、また人間らしくもあったことなんじゃなかろうかと思います。


実際にこの『ロレンツォのオイル』というものは、一部で使用されているらしいです。
看病の末に2000年に亡くなられたミケーラさん、そして、残念ながらロレンツォさんも2008年に誤嚥性肺炎により逝去されたらしいですが、たったの2年しか余命がないと告げられたロレンツォが30歳まで生きられたのは、夫妻の努力も勿論のことながら、ロレンツォの生きる意志も強かったということ。


結構医学の専門用語が出てきたりして頭の中で整理し辛かったりするのですが、医学用語がここまでポンポン使われるのは、きっと人を人として扱わない一部の医師たちに対しての怒りを込めてのことだと思います。
医療機関に勤める人は勿論のことながら、子を持つ親は観ておくべき映画。物凄く深く考えさせられます。


【『ロレンツォのオイル/命の詩』の名言・名台詞】


“もし、我慢できないのなら、イエス様のもとに飛んで行ってもいいのよ。パパとママは大丈夫”

劇中スーザン・サランドンが発したこの名言は、人間の尊厳に関わることであっで非常に重たい言葉であると同時に、子を思う親の無償の愛であったり、逆に親を思う子供の気持ちが痛いほどに表されている名台詞だと思います。

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