映画『17歳の肖像』60年代と現代に共通する経済と階級制度が抱える問題

映画情報


17歳の肖像
(原題:An Education

17歳の肖像 ポスター.jpg
製作:2009年(イギリス) ジャンル:ドラマ/ロマンス
上映時間:100分
監督:ロネ・シェルフィグ 脚本:ニック・ホーンビィ
出演者:キャリー・マリガン、ピーター・サースガード、ドミニク・クーパー、ロザムンド・パイク、エマ・トンプソン、アルフレッド・モリーナ、and more…
第63回英国アカデミー賞:主演女優賞(キャリー・マリガン)受賞


【17歳の肖像】解説/あらすじ


イギリスの人気女性ジャーナリスト、リン・バーバーの回顧録を基に、映画化もされている『ハイ・フィデリティ』や『アバウト・ア・ボーイ』の原作者として知られるニック・ホーンビィが脚本を書き下ろし、デンマーク人女性監督ロネ・シェルフィグが監督した危険な年上の男性との恋に落ちた少女の変化と成長を描く青春ドラマ。ヒロインを演じるのは、ヘプバーンの再来の一人と言われる『プライドと偏見』のキャリー・マリガン。年上の相手役を『エスター』のピーター・サースガードが務める他、ドミニク・クーパー、ロザムンド・パイク、エマ・トンプソン、アルフレッド・モリーナら実力派が脇を固める。


1961年、ロンドン郊外の中流階級の一人娘である成績優秀な16歳の少女ジェニー(キャリー・マリガン)は、オックスフォード大学に入学してほしいと思う両親の気持ちとは裏腹に、日々退屈な日々を送りながら、本当はフランスのパリに行きたいという気持ちを胸に秘めていた。そんなある日、土砂降りの雨の中、傘を忘れてしまって雨に濡れながら学校から帰るジェニーは、年上の男性デイヴィッド(ピーター・サースガード)に家まで送ろうか?と声をかけられる。最初は警戒していたものの、デイヴィッドの知的で紳士的な振る舞いに対して心を許し、自分より倍以上も歳の離れた男性でありながら恋に落ちてしまうのだったが…。


【17歳の肖像】映画感想/レビュー


【オードリー・ヘプバーンの再来キャリー・マリガン】


キャリー・マリガン主演の青春ラブロマンス映画『17歳の肖像』。
アカデミー賞主演女優賞、作品賞、脚色賞でのノミネートをはじめ、本国イギリス等で絶賛されたこの映画ですが、キャリー・マリガンは‘オードリー・ヘプバーンの再来’と称された当時25歳の女優さんですね。
一体何人ヘプバーンやらモンローの再来は居るのですか?という話ですが、少なくともこの映画『17歳の肖像』でのキャリー・マリガンの存在感というか可愛らしさというか美しさ、それに演技力が、オードリーの再来と言われても決して大袈裟ではないようなオーラを放っていますね。
17歳の肖像 キャリー・マリガン
兎に角キュート。


映画の方はといいますと、甘い青春ラブストーリーなのかと思えば、そういうわけでもありません。
寧ろそういったシーンはとんとん拍子にあまり説明もされずに進んでいきます。


【英国病と呼ばれるイギリス冬の時代】


1961年という時代のイギリスは、戦後の影響もあって経済成長は不振に陥り、それに伴って国際競争力は低下、社会保障はままならず、国民は労働の意欲を失くしていた、英国病(イギリス病)とも言われていた時代です。このイギリスの冬の状態は、1979年に鉄の女と呼ばれたマーガレット・サッチャーが首相の座に就いて、様々な政策を講じるまで続きます。


【イギリスの階級制度が抱えるコンプレックス】


イギリスには階級制度があるのですが、大きく3つの階級に分けて、上流階級(ブルジョワ)、中流階級、そして労働者階級(プロレタリア)があります。厳密には中流階級の中でも上位、中位、下位とあるように、映画や音楽のジャンルかの如く細かく細分化されていますが、イギリス人は昔からこの序列に対するコンプレックスが凄く激しい。
労働者階級ないし、下位中流階級くらいの出身であるジェニーの父親のジャック(アルフレッド・モリーナ)は、自分に学歴がなかったばかりに、娘にも同じような苦労をさせたくないと思い、そんな優しさが厳しさとなって、意地でもオックスフォードに出そうと教育します。原題の‘An Education’とは、‘教育’という意味ですね。
この階級がオックスフォード大学とかケンブリッジ大学とかに進学するのは、非常に稀だった。
つまり父親の存在は、学歴や階級というステータスが重要だとされる英国社会、1960年代という冬の時代においてのイギリス内どころか国外に対して、イギリスが抱えるコンプレックスの象徴でもあります。
17歳の肖像 アルフレッド・モリーナ


デイヴィッド(ピーター・サースガード)は、映画の中でセリフや言葉で説明されているわけではないけど、描写としての説明は十分すぎる程にしていて、彼の友人として出てくる上流階級のダニー(ドミニク・クーパー)のような社会的な地位があるわけでもなく、最初は紳士を装っていましたが、少しずつ綻び(真実)が見え始め、焦りからなのか突如としてジェニーに求婚。
待っているのは学歴や階級社会における実情。非常に厳しい英国の現実。嫌な男に映るデイヴィッドですが、彼もまたコンプレックスの塊で、イギリスという社会の犠牲者なんですよね。


【不安定な現代イギリス社会の投影でもある。】


ありきたりなラブストーリー/ドラマのようですが、当時のイギリス社会というか、今でもイギリスには階級社会制度が法的ではなくとも、人々の意識として存在しています。
それに、この映画は2009年に製作、公開されている映画ですが、2008年のアメリカのサブプライムローン問題によってイギリスはその影響をまともに受けており、経済の見通しは非常に暗いものとなっていますので、そのような不安定な現在の状態をも、説明的にするでもなく、あくまで映像として魅せている秀作になっていると思います。


やはり何より、主演女優キャリー・マリガンの存在感がとんでもないことになっています。
ラブロマンスにも甘ったるいのから、堅苦しいのや哀しいのまで色々ありますが、女性じゃなくても見れるラブロマンスだと思います。
寧ろキャリー・マリガン目的で観てみて下さいと言いたくなるくらいにキャリー・マリガンが素敵すぎます!
個人的にはアルフレッド・モリナの演技もイチオシです。

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