映画『英国王のスピーチ』実在した英国の王を描いたイギリス映画の傑作

映画情報


英国王のスピーチ
(原題:The King's Speech

英国王のスピーチ ポスター.jpg
製作:2010年(イギリス/オーストラリア) ジャンル:ドラマ/伝記 上映時間:118分
監督:トム・フーパー 脚本:デヴィッド・サイドラー 音楽:アレクサンドル・デプラ
監督:コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーター、ガイ・ピアース、ティモシー・スポール、デレク・ジャコビ、and more…
第83回アカデミー賞:作品賞、監督賞(トム・フーパー)、主演男優賞(コリン・ファース)、脚本賞(デヴィッド・サイドラー)受賞


【英国王のスピーチ】解説/あらすじ


2010年度アカデミー賞作品賞他4部門受賞作品。実在した英国王ジョージ6世と、彼の吃音賞の治療にあたった言語療法士の友情を描く、史実に基づいた伝記ドラマ。監督は『くたばれ!ユナイテッド -サッカー万歳!- 』のトム・フーパー。主演は『シングルマン』のコリン・ファース。共演に『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのジェフリー・ラッシュなど。


英国王ジョージ5世の次男ジョージ6世(コリン・ファース)は、幼い頃から吃音症を患うことによってコンプレックスに苛まれ、王室の息子でありながら、人前に出ることを極端に嫌がっていた。ある時父親の代理として国民に向けたスピーチのためにマイクの前に立つも失敗してしまう。自分の殻に閉じこもり沈み込むジョージ6世を見るに見かねた妻のエリアザベス妃(ヘレナ・ボナム=カーター)は、彼を連れてスピーチ矯正専門の言語療法士、ライオネル・ローグ(ジェフリー・ラッシュ)の元を訪ねる。英国王子であるジョージ6世に対しても平等を宣言したライオネルは、気後れすることなくジョージ6世と接し、禁煙をさせて、風変わりな治療を進めていくのだった。そんなある日、父であるジョージ五世が逝去。兄のエドワード8世(ガイ・ピアース)が王に即位するも、エドワードは王室で禁じられた愛の道を選び、王位を返上してしまう。次男であるジョージ5世は、考えてもみなかった王の座に、突如就くこととなってしまったのだったが…。


【英国王のスピーチ】映画感想/レビュー


2010年アカデミー賞12部門ノミネート中、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞の主要4部門を受賞、英国アカデミー賞7部門を受賞したイギリス映画の傑作『英国王のスピーチ』。2015年7月現在のところでのRotten Tomatoesでの評価は261件のレビュー中94%批評家にポジティブな評価を下し、平均点は8.6という非常に高い数字をたたき出しています。
英国王のスピーチ 画像.jpg


オスカーを受賞した主演のコリン・ファースの他、共演には『シャイン』のジェフリー・ラッシュ、ティム・バートンの奥さんでティム・バートン映画の常連のヘレナ=ボナム・カーター、『メメント』『ハート・ロッカー』のガイ・ピアース、『ヒア アフター』のデレク・ジャコビなどなどの豪家な面々。
ライオネル・ローグを演じたジェフリー・ラッシュは製作総指揮も兼任している。


ジョージ6世を演じたコリン・ファースの演技は、吃音症を厭味なく自然に演じるなど非常に素晴らしいものがありますが、コリン・ファースの演技以外も物凄く素晴らしい映画です。『総合芸術』と言われて然るべきクラシカルな作品。
ウィリアム・シェイクスピアの『ハムレット』の“生きるべきか死ぬべきか…”という有名な戯曲の朗読に始まり、ベートーヴェンやモーツァルトといったクラシック音楽の巨匠が遺した楽曲の数々、時代設定を考えてだと思われる粗い画質による独特な雰囲気、まるで絵画のような被写体や、わざと背後を暈して被写体を浮き彫りにさせるシャロウ・フォーカスと呼ばれる撮影技法等、新しいものに頼らない、まさに温故知新とでも言うべき表現は全て詰まっていると言っても過言ではない映画。
特に、主人公のジョージ6世が吃音症(きつおんしょう)という弊害を持っていることを上手く利用しての音響効果は特筆すべきものがある。


英国王のスピーチ ジェフリー・ラッシュ.jpg
この音響効果の素晴らしさ辺りは、『シャイン』で実在の天才ピアニスト、デイヴィッド・ヘルフゴッドを演じてオスカーを始め様々な賞に輝いたジェフリー・ラッシュが製作総指揮を兼ねているというところも大きな要因のような気がします。
吃音症とは言葉を円滑に話すことが出来ないという疾患ですが、コリン・ファースは吃音症独特のどもりを巧く表現したり、それ以外の表情の作り方など素晴らしいものがあるし、各国で絶賛されるのも頷ける話しですが、これはコリン・ファース以外の影の素晴らしい仕事なしではありえなかった演技だと思います。なんせ演出が絶妙に巧い。


コリン・ファースに限らず、その他の助演陣、ヘレナ=ボナム・カーターやジェフリー・ラッシュなどの賞を受賞したりノミネートされている人達以外の演技も素晴らしいです。
ヘレナ=ボナム・カーターの良妻の鏡のようなエリザベスの静かな演技は優しさと強さを兼ね備えた母性を感じさせ、ジェフリー・ラッシュのチャップリンみたいな演技は笑いを誘い、ガイ・ピアースは女に惚ける典型的に駄目な一国の主を務めるには十分だったし、あまり目立たないけどチャーチルを演じたティモシー・スポールはまさに当たり役といった感じだし(この人はラスト・サムライやロック・スターでもそぉですが、名脇役と呼ぶに相応しい思います)、俳優みんなの演技が、それぞれ典型的なアドバイザーや典型的な駄目男、典型的な良妻に典型的なファム・ファタール(悪女)といった感じで実に楽しい。


英国王のスピーチ コリン・ファース.jpg
全体的に観て、総合的にアカデミー賞12部門ノミネートや、英国アカデミー賞7部門受賞に相応しい傑作だと思います。
ジョージ6世と妻エリザベスの間の無償の夫婦愛、抑圧されたジョージ6世の心を、幼き頃の虐待や厳しい教育、兄との確執などから来るトラウマを吐きださせることによって、紆余曲折を経ながらも芽生えるローグとの友情、子供(現在の英国女王エリザベス2世)が、パパを「パパ」と呼ぶのではなく「陛下」と呼ぶシーンには、これから世界侵略を図ろうとするナチスドイツの歴史的独裁者、アドルフ・ヒットラーと戦わなくてはいけないジョージ6世に掛かるプレッシャーを鑑みると非常に痛切なものがあり泣けてきます。


ただ、これがローグの綴ったカルテを元に脚本を書いた実話であるにしても、本当にあまりにもジョージ6世に同情してしまうくらい苦くて辛くていい話しすぎるということが、逆にリアリティーに欠けるような気がしなくもない。
そもそも被写体以外を暈すような手法をとっていること自体が、これはあくまで映画だと物語っているようなものです。それでいいんですけど。
『バージニア・ウルフなんかこわくない』や、『スカー・フェイス』を凌駕するようなFワードの連発は清々しいです。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/421803960
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック