映画『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』

映画情報


博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(原題:Dr. Strangelove: or How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb
製作:1963年(アメリカ) ジャンル:SF
監督:スタンリー・キューブリック 出演者:ピーター・セラーズ、ジョージ・C・スコット、スターリング・ヘイドン、and more…


【博士の異常な愛情】解説/あらすじ


アメリカ軍基地の司令官リッパー将軍(スターリング・ヘイドン)が精神に異常をきたし、ソ連の核基地の爆撃指令を発したまま基地に立て篭もった。副官のマンドレイク大佐(ピーター・セラーズ)は、司令官を止めようとするも基地から出られなくなってしまう。マフリー大統領(ピーター・セラーズ)は、ペンタゴンの戦略会議室にソ連大使を呼んで対策を練るが、ミサイル攻撃によって無線を破壊されたキング・コング少佐(スリム・ピケンズ)の1機だけが、何も知らずに目標へ向かっていた…。
冷戦時代の真っ只中に、核による世界破滅を描いたSFブラック・コメディ。スタンリー・キューブリックの代表作であり、後に続く『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』とあわせて、‘SF三部作’とも呼ばれる。


【博士の異常な愛情】映画感想/レビュー


『博士の異常な愛情』に『または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』と続く邦題がついていますが、原題は『Dr. Strangelove: or How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb』であり、『博士の異常な愛情』という邦題の部分は『Dr. Strangelove(ドクター・ストレンジラブ)』というピーター・セラーズが演じた役名であって、本来『異常な愛情』と訳すものではありませんが、結果的に優れた邦題になっていますね。尚、原題である『Dr. Strangelove: or How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb』は、アメリカのホームアニメ、ザ・シンプソンズの中の一話『$pringfield (Or, How I Learned to Stop Worrying and Love Legalized Gambling)』が元になっています。


アメリカと旧ソ連の冷戦時代において、核兵器を突きつけあうような緊迫した状態を、このようコメディ仕立てにしてしまうのは、流石はスタンリー・キューブリックとしか言えません。
同時に当時の政治的なことに対する批判や、近未来に対する警告も描いてるのだから、単なるサスペンス笑劇とも言えないし、ブラックなテーマを笑いで包んだブラック・ユーモアという形の比較的判り易い映画です。判り易いが故に、判り易く笑えるところは笑えるのに、全くもって笑えない恐ろしいテーマを持っています。
『博士の異常な愛情』という映画は、『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』を含む、スタンリー・キューブリックSF3部作と言われていますが、コンピューターの危険性、政治批判など、他の2作であったり『フルメタル・ジャケット』に描かれているテーマが、全て内包されています。


スタンリー・キューブリックの凄さもさることながら、この映画は、ピーター・セラーズの一人三役とその演技が凄い。
全くタイプの異なる、それぞれに頭のネジの一本や二本飛んでいるような人物を、一人で三役こなす演技力に脱帽。しかも初見では、ピーター・セラーズが一人三役こなしているという事実に気づきませんでした。それくらい凄い俳優さん。
映画のラストは、ヴェラ・リンの『We'll meet again』というどこか陽気な曲に合わせて、核兵器によって世界が滅んでいく中エンディングを向かえるというブラック・ユーモアの極みのようなエンディングですが、このシーンには『パイ投げシーン』という、劇場公開を前にしてキューブリック自身がカットしたシーンが存在します。各国首脳や高官が、滅び行く世界を尻目に国防総省の地下でパイ投げをするというもの。
ただでさへ恐ろしいラストシーンですが、このパイ投げシーンが存在していたら、どんなことになっていたのでしょう。

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